2025年10月31日
スタッフが「言えてよかった」と思える職場へ。神経難病ケアの質を高める「リフレクティング型会議」とは?

医療従事者として、利用者様と真摯に向き合い、最善の医療や看護、リハビリなどのケアを提供することは、私たちの責務であり、同時に喜びでもあります。しかし、どんなに努力していても、利用者様が亡くなってしまうことは避けられません。そのような時、デスカンファレンスは、医療者にとってかけがえのない経験となります。
今回は、Global forum on Nursing and Palliative Care(看護と緩和ケアに関する世界フォーラム)が6月27日にイギリスにて開催されることに関連して、デスカンファレンスについて記事にしました。緩和ケアについて考える良い機会になっていただけると幸いです。
デスカンファレンスとは、利用者様が亡くなった後に行われる、医療・介護スタッフ間で行う会議です。医師、看護師、介護士、ソーシャルワーカーなど、利用者様のケアに関わった全てのスタッフが参加します。
デスカンファレンスの目的は、大きく3つあります。
デスカンファレンスの最も基本的な目的は、利用者様の生き方や死を尊重し、その人生に敬意を払うことです。利用者様の最期を振り返り、その人生の歩みを尊重することで、医療従事者としての使命感と感謝の気持ちを持つことができます。これは単なる形式的な儀礼ではなく、利用者様との出会いと別れを通じて、医療従事者としてのあり方を見つめ直し、自分自身の成長につなげる貴重な機会です。
終末期ケアに関わるスタッフは、利用者や利用者の死に直面することが多く、深い喪失感や悲しみを抱えることがあります。デスカンファレンスは、スタッフ同士がこれらの感情を共有し、支え合うことで、心の負担を軽減し、心のケアを行う場として機能します。スタッフ全員が互いの思いを分かち合い、支え合うことで、心の整理がつき、前に進む力となります。
デスカンファレンスでは、ケアの流れや結果を振り返り、うまくいった点や改善点を共有します。それぞれのスタッフが異なる視点から意見を述べ合うことで、より客観的な評価が可能となり、今後のケアの質向上に役立てることができます。このプロセスを通じて、スタッフ全員が自身のスキルを向上させ、より良いケアを提供するための具体的な知識を得ることができます。
終末期ケアでは、「もっとこうしていれば」という後悔の念が付きまといます。デスカンファレンスは、こうした後悔や悩みを共有し、自分の中で整理するための重要な機会です。医療の現場では、すべての利用者を救えるわけではないという現実に直面することが多々ありますが、デスカンファレンスでこれらの感情を共有することで、心の整理が進み、自分が行ったケアに対する納得感を得ることができます。
デスカンファレンスを効果的に実施するためには、いくつかの注意点があります。
デスカンファレンスでは、参加者が自由に意見を出し合える環境が必要です。そのためには、心理的安全を確保するためのルール作りが不可欠です。参加者が安心して自分の意見や感情を表現できるよう、デスカンファレンスの前にルールを設定しましょう。
デスカンファレンスの進行役である司会者の役割は非常に重要です。司会者は、会議の進行を円滑にし、全員が意見を述べる機会を均等に持てるように配慮する必要があります。適切なタイミングで話を振り、議論が偏らないようにすることが求められます。
デスカンファレンスでは、すべての参加者が意見を出すことが大切です。一人一人の意見が集まることで、多角的な視点からケアの振り返りができ、学びも深まります。発言しやすい雰囲気を作り、全員が積極的に参加できる場を提供しましょう。
デスカンファレンスは、過去のケアを振り返り、学びを得るための場であり、責任を追及するための場ではありません。全員がこの共通認識を持つことが重要です。批判ではなく建設的なフィードバックを心掛け、相手の立場を尊重することが大切です。
デスカンファレンスは、看護師や他の医療従事者にとってのグリーフケアの場でもあります。利用者や利用者の死に直面し、喪失感を抱えるのは家族だけでなく、医療者も同様です。デスカンファレンスを通じて、そうした感情を共有し、心のケアを行うことが重要です。
デスカンファレンスは、医療従事者にとって非常に重要な学びの場です。しかし、それ以上に、自分自身のケアや心の整理をするための貴重な機会でもあります。過去には戻れないけれど、デスカンファレンスを通じて得た学びや共有した経験は、確実にあなたの自信と成長につながります。
デスカンファレンスは、医療従事者が学び、成長するための大切な場です。効果的に実施するためには、参加者全員が安心して意見を述べられる環境を作り、建設的な議論を行うことが必要です。これらの注意点を踏まえて、次のデスカンファレンスをより有意義なものにしていきましょう。
このブログ記事が、デスカンファレンスへの理解を深め、参加するきっかけとなることを願っています。
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伝の心
センサーを使用して身体の一部をわずかに動かすだけで、文字をパソコンに入力できる意思伝達装置。 DVDやテレビなどのリモコン操作、インターネットや電子メールなど、介護者の力を借りることなく、利用者さまが多くのことを自由に行うことができます。これまでの仕事を継続する・新しい活動を始めるなど、さまざまな可能性を広げるツールであり、ALS当事者で国会議員の舩後靖彦氏も使用していることで知られています。
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胃ろう
胃ろうとは、お腹に小さな穴を開け、そこから直接胃に栄養を送り込む方法です。口からの食事が困難になった場合でも、胃ろうを利用することで必要な栄養を摂取することが可能です。ただし、胃ろう造設はご本人やご家族にとって大きな決断となります。そのため、メリットだけでなく、手術が必要であること、チューブの管理が必要になること、外見上の変化があることなど、デメリットも理解し、医師と相談の上で判断することが重要です。
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特殊浴槽
お風呂は利用者さまにとって最も楽しみな時間のひとつです。MCには人工呼吸器を利用している利用者さまも快適・安全に入浴することができる、機械式の特殊な浴槽があります。ストレッチャー上に寝たままの状態で、洗身・洗髪しゆったりと入浴することができます。

リフト(スリングシート)
自力で移動できない利用者さまを介助リフトで運ぶ際に使用するシート状の補助具。頭から全身を包み込むハイバック型、頭を支える必要のない人に適したローバック型、介助者が取り扱いやすい脚分離型などのさまざまな種類があります。身体状態や体重等を考慮して、その方に合ったスリングシートを選択します。

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