自分らしく生きる

第二の自宅

セカンドファミリーとしてお迎えします

ALSとは

皆さんは「ALS」がどんな病気なのか、ご存じでしょうか。

ALSとは「筋萎縮性側索硬化症」という病気の略称で、人間の手足を動かすといった運動を司るニューロン(神経)に障害を与えます。ニューロンに異常が発生すると筋肉を動かす命令が伝わりにくくなり、身体を思った通りに動かすことができなくなってしまいます。筋肉は負荷を与えなければ段々と衰えていってしまいますので、全身の筋肉が次第に衰えていってしまう病気がALSです。

症状には個人差が大きいですが、代表的な初期症状として以下のものがあります。

  • 飲み込みにくい
  • しゃべりにくい
  • つまずきやすい
  • ものが急に重たく感じる
  • 細かい作業がしにくい

これらの初発症状には個人差があり、その進行もまちまちとなります。

初期症状別のタイプ分類

ALSは主な初期症状によって、以下のタイプに分けられています。

上肢型: 上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。
下肢型: 下肢の腱反射の低下、消失が早期から見られるなど下肢から発症する。
脳神経の障害が前面に出る。
球麻痺型: 言語障害、嚥下(物を飲み込むこと)障害などの症状が主体となる。
呼吸筋型: 呼吸筋麻痺が初期から見られる。

ALSが進行していくと、以下の重篤な症状があらわれます。

  • 上肢や下肢の筋萎縮
  • 顔・舌・のどの筋萎縮
  • 呼吸筋の障害

症状の進行が続けば最終的に、食事や会話ができなくなります。

また呼吸筋も動かなくなりますので、自力での呼吸が難しくなってきます。

自力での呼吸が難しくなってくると、人工呼吸器に頼らざるを得ない場合も少なくありません。

これらの症状の出かたや、症状の進行具合には個人差が出てきます。


ALSかも?と思ったら

まずALSと思われる症状が出た場合は、なるべく早めに神経内科を受診しましょう。

決して自分独自の調査(ネット情報など)で判断する事だけはしないで下さい。

体に異変を感じた際には、一刻も早く病院で検査してもらう事をおすすめします。

ALSの場合は、早期に対応する事でその進行を抑える事が期待できます。

仮にALSでなかったとしても、ALS以外の病気の早期発見の可能性が高まります。

四大陰性症状

ALSは全身の筋肉が衰えていきますが、障害を受けにくい機能もあります。

  • 眼球運動
  • 感覚
  • 排尿・排便
  • 床ずれ

これらの機能はALSを患っていても障害を受けにくく、「四大陰性症状」と呼ばれています。眼球運動だけで文章を打ったり、身の回りの家電の操作をしたりする機器もありますので、適切な機器の使用で自分らしく生活することができます。


ALSの治療について

次にALSと診断された場合の対応について紹介していきます。

残念ながら今のところは、ALSを完全に治す治療法や特効薬などはありません。

そのため薬物療法やリハビリなど、患者さんごとの症状の進行にあわせた対症療法がおこなわれます。

薬物療法…神経を障害から保護する効果のあるお薬を使用

リハビリ…関節を動かす訓練やストレッチを実施

リハビリ

特にリハビリは、関節の硬化や筋力低下を遅らせるために行います。

また、嚥下機能の維持や誤嚥防止のための処置も必要になるため、食事形態の工夫や口腔ケア・胃ろう造設が検討されます。

症状が進行すると、自分の意志で体を動かすことが難しくなっていきます。

患者さんの苦痛を和らげるケアを中心に行っていきます。


ALSは国の指定難病

ALSは国の指定難病です。

指定難病とは、原因不明で治療法の確立されていない病気を指します。

指定難病では、治療費等の公的補助を受けることができますので、ALSと診断されたら補助を受けることができます。

指定難病における公的補助

指定難病医療費助成制度 ALSの重症度や、所得などに応じて自己負担の上限が設けられる制度
高額療養費制度 保険診療の自己負担額が高額な場合、所得に応じて自己負担に上限が設けられる制度
障害者医療費助成制度 障害者手帳を有する人の自己負担の全部または一部が助成される制度

ALSの治療では患者さんご本人やその家族の身体的、肉体的負担が重くのしかかります。

こういった制度を活用することで、安心して手厚いケアを受けていただくことができます。


ALSの原因

ALSは神経変性疾患に分類される病気であり、神経変性疾患はその原因が明らかではありません。

なぜ運動神経だけが変性や委縮するのか、その詳しいメカニズムは分かっていないのです。

原因が不明なため、ALSを完治させることができる治療薬は今のところはありません。

そのため、現時点では症状の進行を完全に止める事ができないのです。


ALSの患者数について

ALSを患っている患者さんは日本全国に約9,200人います。

また1年間で新たに発症する患者は、10万人中1~2.5人であるとされています。

同じ神経変性疾患の中で、最も患者数の多い病気がパーキンソン病です。

パーキンソン病の患者数は約16万人で、年間で新たに発症する人は10万人中100~150人です。


ALSの進行について

ALSの発症から進行する速度は、他の神経変性疾患と比べて早いです。

しかしあくまでALS全体で見たデータであり、実際には個人差が大きく出ます。

ホーキング博士

ALSを発症した有名人に、車椅子の物理学者ホーキング博士をご存じでしょうか。

彼は大学院生の時にALSと診断されて、医師から余命2~3年と宣告されました。

しかしその予想を大きく外し、彼は76歳まで生きていました。

ALSについてはまだまだ不明な点が多く、ホーキング博士のように長生きできるケースも実際にあります。

一つ言えるのは、病気の早期発見と早期の治療が予後改善に影響する可能性です。

ですのでALSの初期症状を感じたら、すぐに病院を受診してください。

早めに診断や治療を受けることで、予後改善できる可能性があります。