2025年3月26日

不便の経験から見つめ直すアクセシビリティの重要性-私たち株式会社MCの視点-

先日、当社のスタッフが幼い子どもをベビーカーに乗せて、近所の商業施設を訪れた際、少し困ったことがありました。新しくオープンしたばかりのカフェで休憩しようと、奥まった静かな席を選んだのですが、席と席の間隔が思ったよりも狭く、ベビーカーを押しての移動に苦労したのです。両側のテーブルの配置が、まるでベビーカーの通行を意図的に妨げているかのように感じられ、少し残念な気持ちになりました。この何気ない経験から、私たちは改めて、日常生活におけるアクセシビリティの課題について深く考えるきっかけを得ました。

日常の中に潜むアクセシビリティの課題

ベビーカーを利用している方が日々直面する困難は、決して他人事ではありません。例えば、エレベーターの混雑。急いでいる時に限ってなかなか来なかったり、定員オーバーで乗れなかったり。公共交通機関では、優先席があるにも関わらず、必要としている人が座れないという現実も目にすることがあります。今回のカフェでの経験は、そうした日常の小さな不便の積み重ねが、当事者にとっては大きなストレスになり得ることを改めて教えてくれました。

別のスタッフからは、以前利用したおしゃれなデザインのビルで、エレベーターの入り口が非常に狭く、ベビーカーを畳まなければ乗ることができなかったという経験が語られました。デザイン性ばかりが重視され、本当に必要とする人への配慮が欠けている事例は少なくありません。また、過去には、ある大手コーヒーチェーンが、ベビーカー利用者からの声を受けて、店舗のテーブル配置を見直したという事例もありました。利用者の声を真摯に受け止め、改善に繋げる姿勢は、私たちも大いに学ぶべき点です。特に弊社では車椅子を利用して外出することも多く、事前に確認すべき点の視野を広げることが重要です。

日本と海外の優先席に対する考え方の違い

アメリカの一部鉄道では、特に優先席を設けなくても、困っている人がいれば自然と周りの人が席を譲り合う文化が根付いている一方、日本では優先席があっても、その役割が十分に果たされていない現状があります。形骸化した制度ではなく、一人ひとりの意識改革こそが重要なのかもしれません。

当社の駐車場では、施設から一番近くに体に不自由がある方が車を止めることができる駐車スペースを用意しています。そして、当施設をご利用される方は意識的に駐車スペースの譲り合いをしていただいております。これらの事例は、アクセシビリティに関する問題が、単に物理的なバリアを取り除くことだけでなく、人々の意識や利用マナーにも深く関わっていると考えます。

私たちは「不便を経験して初めて、アクセシビリティの重要性に気づくことが多い」という共通認識を持ちました。そして、アクセシビリティの向上には、常に問題意識を持ち、アンテナを高く張り、積極的にアイデアを発想し、行動に移すことが不可欠であることを改めて確認することができました。

株式会社MCの理念とアクセシビリティへの取り組み

私たち株式会社MCは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)をはじめとする神経難病の方や、人工呼吸器をご利用の方など、医療依存度の高い方々が安心して日常生活を送れるよう、専門的なケアを提供しています。私たちは、「Meet your Color」というロゴに込めた想いを大切にし、入居者様一人ひとりの持つ特別な個性、その人らしい生き方に焦点を当て、共に考え、共に挑戦することを最も重要な使命と考えています。

神経難病の利用者様との日々の関わりの中で、私たちは、移動の自由やコミュニケーションの円滑さがいかに重要であるかを痛感しています。例えば、意思伝達が困難な方のために、最新の機器を積極的に活用し、利用者様に合わせた工夫を行ったり、メーカーの新製品開発に関わることもあります。透明文字盤や呼気式入力装置、視線入力装置など、様々な意思伝達装置を通じて、利用者様の「伝えたい」という願いをサポートしています。

また、外出が困難な利用者様にとって、施設周辺へのお散歩や、季節のイベントへの参加、時には車での遠出などが、最高の気分転換となることを知っています。呼吸器などの医療機器を装着したままでも、専門のスタッフが付き添い、適切なケアを行うことで、安心して外出を楽しんでいただけるよう努めています。

利用者様がご自宅のように快適に過ごせるよう、個室のレイアウトを自由にしていただけるようにしたり、お好きなものをできる限り食べたり飲んだりできるような工夫も行っています。これらの取り組みは、単に機能的なサポートを提供するだけでなく、利用者様一人ひとりの尊厳と希望を尊重し、「その人らしい生き方」を支えたいという私たちの強い思いの表れです。

より広い公共空間への意識

今回のベビーカーでの経験は、私たちの施設内だけでなく、より広い公共空間におけるアクセシビリティについても、改めて意識を向ける良い機会となりました。私たちは、神経難病の方々への支援を通じて培ってきた、多様なニーズへの理解や、困難を抱える方への共感を活かし、地域社会全体のアクセシビリティ向上にも貢献していきたいと考えています。

そのためには、日々の業務の中で、常にアクセシビリティの視点を持つこと、小さな不便も見過ごさずに改善策を検討すること、そして、必要であれば積極的に声を上げていくことが重要だと考えています。過去には、利用者の皆様からの声を受けて、ケアの方法や設備の改善に取り組んだ事例も数多くあります。

今後の展望と私たちの決意

今後も、私たちは、「人の思いを実現できる会社」という企業理念のもと、利用者様とそのご家族だけでなく、地域社会のすべての方々にとって、より快適で暮らしやすい環境づくりを目指し、積極的に取り組んでまいります。今回の経験を胸に、インクルーシブな社会の実現に向けて、小さな一歩でも着実に進んでいきたいと考えています。

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好きなものを食べられる、飲める(経口、胃ろう)

利用者さまの食べたいもの・飲みたいものをできるだけ実現させるため、さまざまな工夫を取り入れています。気管切開を行い人工呼吸器を使っている利用者さまでも、食事やスイーツなどを食べやすい形状にしてお口で味わうことや、胃ろうを通してアルコールを摂取することが可能です。「胃ろうからお酒?」と驚かれるかもしれませんが、MCではできる限り利用者さまのご希望に沿えるよう、体調と相談しながら柔軟な対応を行っています。

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伝の心

センサーを使用して身体の一部をわずかに動かすだけで、文字をパソコンに入力できる意思伝達装置。 DVDやテレビなどのリモコン操作、インターネットや電子メールなど、介護者の力を借りることなく、利用者さまが多くのことを自由に行うことができます。これまでの仕事を継続する・新しい活動を始めるなど、さまざまな可能性を広げるツールであり、ALS当事者で国会議員の舩後靖彦氏も使用していることで知られています。

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「ココヘルパ」は、スタッフの負担軽減と入居者さまの安全確保に貢献する、頼もしい無線式ナースコールシステム。さまざまなスイッチに接続することができ、ボタンを押すのが難しい利用者さまでも安心して操作できます。スタッフのスマートフォンと連携すれば、施設内のどこからでも呼び出しに対応でき、さらにその場で対応記録を入力することで、業務のペーパーレス化や効率化にもつながります。最近では、離床センサーなどを組み合わせ、利用者さまの状態を一括して把握・管理するなど、活用範囲がますます広がっています。

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スマイルスプーン

口を閉じることに障害があり、食べ物を口の中に入れることが困難な方をサポートするスプーン。スライドして適量を押し出し、飲み込みやすい下の上の位置に食べ物を運ぶことが可能です。食べる側も介助する側もストレスなく、楽しい食事の時間を過ごせます。

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