2025年10月31日

スタッフが「言えてよかった」と思える職場へ。神経難病ケアの質を高める「リフレクティング型会議」とは?

「またミスをしてしまった…」「あの対応で本当に良かったんだろうか…」

医療・介護の現場では、日々判断が求められます。特に神経難病のように複雑で個別性の高いケアでは、スタッフが一人で悩みを抱え込んでしまうことも少なくありません。

従来の「報告・連絡・相談」だけの会議や、ミスの原因追及になってしまいがちなカンファレンスでは、スタッフは萎縮してしまい、本当に大切な「現場の小さな違和感」や「前向きな悩み」が共有されにくいのではないでしょうか?

私たち株式会社MCは、神経難病の方を中心とするケアのプロ集団として、「失敗を恐れず、そこから学ぶ文化」を何よりも大切にしています。

今回は、スタッフの心理的安全性を守り、チーム全体で成長するための強力な手法である「リフレクティング(リフレクション)型会議」について、私たちの取り組みも交えてご紹介します。

そもそも「リフレクティング型会議」とは?

リフレクティング(リフレクション)型会議とは、北欧で生まれた「リフレクティング・プロセス」という手法を応用したものです。

簡単に言えば、「対話を聞くこと」を通じて、客観的に自分やチームのケアを見つめ直す会議です。

従来の会議と違い、直接的なアドバイスや批判(ダメ出し)をするのではなく、「第三者として」対話を聞き、感じたことや異なる視点を「話し合う」のが特徴です。

なぜ今、介護・医療現場で必要なのか?

私たちMCがケアを行う神経難病の現場では、利用者さまの状況が日々変化し、マニュアル通りにいかない場面が多発します。

  • 「意思伝達装置の反応が昨日と違う…」
  • 「ご家族の不安に、どう寄り添えばいいだろう…」
  • 「このケアプランが、本当に利用者さまのQOL(生活の質)向上につながっているだろうか?」

こうした複雑な悩みを「個人のスキル不足」で片付けるのではなく、チームの「共通の財産」として学び合う必要があります。

リフレクティング型会議は、まさにそのためにあります。

  • 心理的安全性の確保: 「批判されない」場であることが保証されるため、安心して悩みを打ち明けられます。
  • 多角的な視点の獲得: 他のスタッフの「客観的な感想」を聞くことで、一人では気づけなかった視点(メタ認知)が得られます。
  • 「答え」より「気づき」を促す: 上司が「正解」を教えるのではなく、本人が自分で考え、気づきを得るプロセスを重視します。

これにより、スタッフは「やらされ感」ではなく、自ら考えて行動する力を養うことができるのです。

実践!「リフレクティング型会議」の進め方

難しそうに聞こえますが、本質はシンプルです。ここでは、MCの現場で起こりそうな場面を例に、具体的な流れを見てみましょう。

【テーマ】

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の利用者様A様のケア。最近、スイッチを使った意思伝達装置の反応が鈍く、スタッフのBさんが「自分の関わり方が悪いのでは…」と悩んでいる。

【登場人物】

  • 話し手(相談者): スタッフBさん
  • 聞き手(面接者): リーダーCさん
  • リフレクティング・チーム: 看護師、理学療法士、他の介護士(3〜4名)

ステップ1: 「話し手」と「聞き手」の対話(約10分)

まず、BさんとCさんだけが対話します。リフレクティング・チームは少し離れた場所で、黙ってその対話を聞いています。

リーダーCさん: 「Bさん、今日はA様のことで悩んでいると聞きました。どんなことが気になっていますか?」

スタッフBさん: 「はい。最近、A様に意思伝達装置で話しかけても、反応がすごく遅くて…。前はもっとスムーズだったんです。私が焦りすぎているのか、それともA様の体調が…と不安で。」

リーダーCさん: 「そうだったんですね。反応が鈍いと感じると、不安になりますよね。特にBさんはA様とのコミュニケーションを大切にしていましたもんね。」

スタッフBさん: 「はい。だから、私のやり方が悪いせいで、A様が『話したい』という気持ちを失っていたらどうしようって…。」

ステップ2: 「リフレクティング・チーム」の対話(約10分)

次に、話し手(Bさん)と聞き手(Cさん)は黙って、今度はリフレクティング・チームが対話するのを聞きます。

看護師: 「Bさんの『A様の気持ちを失わせていたらどうしよう』という言葉が印象に残りました。それだけA様に真剣に向き合っている証拠ですよね。」

理学療法士: 「私は、A様の体調面が気になりました。もしかしたら、意思伝達装置を見るためのポジショニングやスイッチのポジショニングが少し合わなくなってきたのかも?あるいは、疲れやすい時間帯とか…。」

他の介護士: 「そういえば、昨日ご家族が『最近少し眠れていないみたい』と仰っていたのを思い出しました。それも関係あるかもしれませんね。」

<ポイント>

チームはBさん(話し手)に直接アドバイスしません。「私はこう感じた」「私はこれを思い出した」と、あくまで自分たちの間で感じたことを話し合います。

ステップ3: 再び「話し手」と「聞き手」の対話(約5分)

チームの対話を聞いて、話し手(Bさん)が何を感じたかを、聞き手(Cさん)と共有します。

リーダーCさん: 「今、チームのみんなの話を聞いて、Bさんはどう感じましたか?」

スタッフBさん: 「…ハッとしました。私、自分の『やり方』ばかりに目がいってました。でも、A様の体調やポジショニング、睡眠時間とか、見るべき視点が他にもあったんですね。なんだか、一人で抱え込んでいたのが馬鹿みたいです。」

リーダーCさん: 「決して馬鹿みたいじゃないですよ。Bさんが悩んでくれたから、チームみんなでA様のことを深く考えるきっかけができました。まずは明日、理学療法士さんと一緒にポジショニングを見直してみませんか?」

このように、リフレクティング型会議は「誰かを責める」のではなく、自然な対話の中から「次の一手」をチーム全員で見つけるプロセスなのです。

なぜMCは「振り返り」を大切にするのか

私たち株式会社MCは、「失敗は誰にでもある。でも、その後の行動で未来が変わる」と本気で考えています。

「神経難病のプロ集団」であるためには、スタッフ一人ひとりが学び続けることが不可欠です。しかし、ミスを恐れるあまり「できない理由」ばかり探すようになってしまっては、利用者さまの「やってみたい」という願いを叶えることはできません。

 「インシデント」は「学びのチャンス」

私たちはインシデントやアクシデントが起きた時、「誰が」ミスしたかではなく、「何が」起きたかに焦点を当てます。

リフレクティング型会議の精神は、私たちの日常的な取り組みにも根付いています。

  • 危険予知トレーニング(KYT):
    リスクを事前に予測し、「こう行動すると、こうなって、こんなリスクがある」とチームで意見を出し合います。これは、事故を防ぐだけでなく、「他者は自分と違うリスクを感じている」と知るための対話トレーニングでもあります。
  • デスカンファレンス(看取りの振り返り):
    亡くなられた利用者様のケアを振り返る際も、決して責任追及はしません。過去のケアから学びを得ると同時に、看取ったスタッフ自身のグリーフケア(心のケア)の場としても重要視しています。

リフレクティング型会議は、こうした「失敗を許容し、対話から学ぶ」という文化を、さらに強化してくれる強力なツールなのです。

あなたの職場で「小さなリフレクティング」を始めるヒント

「うちの職場では難しそう…」と感じたリーダーの方もいるかもしれません。

大切なのは、形から入ることではなく、**「安心して話せる場をつくる」**という意識です。

  • まずは3人から: 全員でなくても構いません。まずは3人で、5分でも10分でも「ただ聞く」時間を作ってみましょう。
  • 「アドバイス」より「感想」を: 「こうした方がいい」ではなく、「〇〇さんの言葉を聞いて、私はこう感じた」と、主語を「私」にして伝えてみてください。
  • 成功体験も振り返る: 悩みだけでなく、「最近うまくいったケア」をテーマにするのも非常に効果的です。なぜうまくいったのかをチームで共有することで、ケアの質が標準化されます。

「ここに来てよかった」と誰もが思える場所を目指して

株式会社MCは、「利用者さまらしい生き方・暮らし方」を一緒に考えるプロ集団であると同時に、「スタッフ全員が目標を持ち学び続けられる」組織でありたいと願っています。

リフレクティング型会議のような「対話」を大切にする取り組みは、スタッフの心理的安全性を守り、結果として利用者さまへの質の高いケアにつながると信じています。

「できない理由を探すのではなく、どうやったらできるのかを考える」

そんな前向きなチームで、あなたの経験とリーダーシップを発揮してみませんか?

私たちの理念や取り組みに少しでも共感いただけた医療職の方、リーダーの方は、ぜひ一度お話ししませんか?

あなたの職場での悩みや、これから挑戦したいこと。ぜひお聞かせください。

→ 株式会社MCへのお問い合わせはこちら

https://mc-misato.com/recruit

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プラスチックケーススイッチ

押した時がスイッチオン・離すとオフとなる、指で押して使うタイプの軽量でシンプルなスイッチ。握力の大きさに応じて適切なスイッチを選ぶことができます。プラスチックケースの中に内蔵されたマイクロスイッチの場所を変えることで、感度を細かく調整することが可能なため、利用者さまの状態に合わせて工夫してセッティングを行っています。

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意思伝達装置/OriHime eye+Switch

視線やわずかな動きで思いを言葉に変える、社会参加を実現する革新的な意思伝達装置。視線入力やスイッチ入力で文字を選び、合成音声でスピーチができるため、ALSなどの神経難病の方々も自由に意思を伝えられます。家族や介護者とのコミュニケーションはもちろん、テレビ操作やインターネット利用など、日常生活の多くの場面で活用可能。OriHemeにはカメラやマイク、スピーカーが搭載されており、周囲を見渡したり、会話にリアクションするなどその場にいるようなコミュニケーションを実現し、生活の質を大きく向上させる可能性を秘めています。

床ずれ防止用具/ここちあ

食事介助や離床などの背起こしケア時に発生する「床ずれリスク」を軽減するために開発されたエアマット。ベッドと連動した自動圧力調整機能を搭載しており、背上げ角度に応じてマットレス内の圧力を自動で調整し、体勢をしっかり保持して床ずれを予防します。操作パネルにはガイダンス機能付きのフルカラー液晶画面を採用。約10分で空気を充填できるエアポンプを備えているほか、停電時にも安心して使用できる設計で、使い勝手と安全性に配慮しています。

スマイルスプーン

口を閉じることに障害があり、食べ物を口の中に入れることが困難な方をサポートするスプーン。スライドして適量を押し出し、飲み込みやすい下の上の位置に食べ物を運ぶことが可能です。食べる側も介助する側もストレスなく、楽しい食事の時間を過ごせます。

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