2018年11月19日

第六回日本難病ネットワーク学会学術集会に参加して ~ その1相談員 ~

2018年11月16日~17日の期間で岡山県岡山コンベンションセンターにて開催された学術集会に当施設より3名参加して参りました。今回は初めて当施設からポスター発表もしております。その集会に関して感想や発表内容などをお伝えさせていただきます。

<日本難病ネットワーク学会 設立趣旨>

日本難病ネットワーク学会は、職種や所属の枠を超えて広く難病の課題を検討し、医療とケア体制の工場を図る事を目的として、平成25年度に設立いたしましました。難病医療に関わる職種が活発に意見を交換し、相互の専門性を高め、日本の難病医療の向上に貢献できるように一年に一度開催されております。(学会趣旨より抜粋)

<参加職種>

医師・看護師・介護士・薬剤師・保健師・理学療法士・作業療法士・栄養士・相談員・ご遺族・患者本人・各難病支援団体・介護施設・医薬品メーカー・各県担当職員 等

今回で私個人としては2回目の参加ですが、今回も新たな刺激を受けて参りました。

多くの難病の方を受け入れる施設として、難病に関わる方々の抱える問題点や課題、またその実態や最新の情報を得る事に大変有意義な学会と思っております。

この学会は難病に関わる多職種による研究発表が主となり、必ずしも専門分野だけでない多岐にわたる発表が魅力です。昨今難病に限らず医療・介護に於いては「多職種連携」「地域包括ネットワーク」といった言葉をよく聞くようになりました。今学会では「多職種連携」の実際をテーマに発表している団体が多かったのが印象的でした。

その中でも印象深く興味を持った発表をいくつか抜粋しご紹介致します。

 

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< 症例1 > 気管切開拒否から手術を受け入れたALS症例へのチームでの取り組み

~和泉市立総合医療センター~

【目的】ALSの患者では気管切開について何度も話し合いの場を持つ事が多い。気管切開をしないと意思決定されていても、呼吸困難が出現し救急の場で気管切開を希望する場合もある。そのため気管切開の意思決定支援には十分な検討が必要である。私たちは当初気管切開を拒否していたが緊急入院後気管切開を希望された事例を経験したので報告する。

【方法】81歳男性 主病名ALS 入院時CPAPを使用 患者記録をもとに事例研究

【結果】当初かかりつけ医には胃瘻は希望するが気管切開は拒否を伝えていた。胃瘻増設目的の入院時に再度気管切開について説明をした。その際「今後の人生で孫と過ごす時間がもう少し欲しい」などの発言があった。家族との再度の話し合いの中で、家族が援助・支援を行うことを話し、最終的に気管切開を希望された。

【考察】患者の気持ちの変化に柔軟に対応する事、また入院前の生活状況の情報共有と関係者への働きかけを密に行う事が個別的な生活支援に結びついたと考える。

 

< 症例2 > 在宅難病患者における情報共有システム活用のためのバイタルサイン入力省略化への試み

~信州大学医学部付属病院 難病診療センター 他~

【目的】在宅で長期療養を行う難病患者には、訪問診療、訪問看護、介護など多くの職種や施設が関わるがその情報は個別に管理され、共有することは困難である。我々は情報共有システムを構築した。しかしバイタルサインについては手入力であるため負担、誤入力があり十分活用されてこなかった。そこでバイタルサインの省略化を検討した。

【方法】NFC機能を内蔵した体温計・血圧計・パルスオキシメーター各種機器の測定値を端末に送信し、ソフトで閲覧できるソフトの構築を試みた。またその患者のIDカードをそれぞれ作成し、操作の簡便化省略化について検討した。

【結果】これまでに比べて迅速に入力する事が可能になった。訪問看護や介護も作業が効率化し作業時間が短縮された。

【考察】入力の自動化で省略化が進み、本システムが多く活用される事で患者の情報を一括して共有する事ができより迅速な対応が可能となる事が期待できる。

 

< 症例3 > OriHime を活用し夢を叶えたALSの一例~実現に向けた支援とその効果について

~西新潟中央病院 リハビリテーション科 他

【目的】病室に居ながらも娘の挙式に参列したいと希望するALS患者を担当する機会を得た。実現に向けた支援の方法と経過を報告する。

【方法】50歳代、男性、人工呼吸器を装着しながらの常食の嚥下も可能、四肢全廃、レスパイトにて入院の方。

コミュニケーションは口文字か意思伝達装置にて代償。病室から式場を繋ぐため分身ロボットOriHimeをレンタルで持参しており、これを遠隔操作しての挙式参列に向け介入を行った。式場は海外(ハワイ)の為タイムスケジュール調整、ネット環境整備、現地支援者の育成、連絡手段の用意、病室での操作環境構築支援などをする必要があった。

【結果】連絡手段はSkypeを設定と使用方法をマニュアル化、PCに詳しい親族に現地支援を依頼した。当日はOriHmeが娘と共にヴァージンロードを歩き、患者は現地の状況を病室で体験する事が出来た。

【考察】環境に対する介入が主となった事例ではあるが、患者のニーズを叶え主体的に参加する機会を提供出来たという視点ではリハビリの目的を達成できたと考える。分身ロボットのようなツールは病床にある患者の活動、参加、QOL,に貢献できる可能性がある。

 

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3つの症例を上げさせていただきました。他にも「特定非営利法人団体がスイッチ作成支援」をされている事業所の発表や、「コミュニケーション支援を行う多職種によるワーキンググループを立ち上げ出前式の研修会を企画し行った発表」(最優秀口演賞)もありました。いずれも多職種の連携があって成り立つ事例です。一つの専門職だけでなく本人、家族の協力も必要だった内容だったように思います。

難病の方々を支えるには発表にもあったように多くの方々、また多職種の方に支援をしていただかないと健常者と同様の生活は難しいのが現実です。

また今回の発表の多くが病院や研究機関の発表であり、費用に関する点にはあまり触れておりません。難病を抱えた方々の中でも資金の有る一部の方々にしか出来ない支援やボランティア的な支援では長続きはしません。今学会の趣旨とはずれてしまうのかもしれませんが、患者本人の負担する金額やその支援する事で関わる方々の人件費等コスト面のアプローチも合わせて考える事も継続的な支援をする上で必要だと思われます。

私の学会参加目的の一つに「当施設の現状把握」を考えておりました。当施設は、介護・看護・リハビリ・ケアマネ・相談員・事務・栄養士・医師・薬剤師・歯科・口腔衛生士・マッサージ等多職種が利用者一人一人に関わっております。いうなれば多職種連携による地域包括ネットワークが一つの有料老人ホーム内で行われております。当施設内での問題点が本来の地域包括ネットワーク(多職種連携)でも共通するのではないか?またその解決手段もあるのではないか?といった点を勉強出来ればと考えておりました。しかしながら多くは問題提起や経過を発表するにとどまる内容でありました。中でもコミュニケーション不足、情報共有、支援の在り方等は画一的な方法は無く、その都度状況に合わせた対処方法であるように感じております。当施設においてもその状況は大きく変わらず、むしろ現時点ではこの方法しかないと思えます。

今後も多職種連携と情報共有の在り方を模索しつつ取り組み、効果的な方法については学会等で発表出来ればと思います。

来年は福岡開催となります。

株式会社MC サポートハウスみさとヴィラ 嶋

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福祉先進国であるノルウェーで生まれた、快適性抜群の車椅子。ティルト&リクライニング機能により、体の状態に合わせた細かな調整が可能です。特に頭部、背中、足のサポートが充実しており、座り直しが難しい方や姿勢を維持することが困難な方でも、安心して長時間使用できます。

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筋電図測定装置 ニューロノード

神経難病(ALS、脳性麻痺等)や事故による脊髄損傷などで動きに制限のある方々のために開発された、世界初のウェアラブルデバイス。筋電、空間、眼球の3つのモードから体の状態に応じて選択でき、微細な動きや不随意な動きも設定で調節することが可能です。Bluetooth接続によりiPadと連携し、どんな体勢でも使用できます。メール、インターネット、アプリ、SNS、勉強、ゲームなど、多様な操作が可能で、利用者の世界を広げます。

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