2024年10月24日

ノロウィルスだけじゃない!感染性胃腸炎のすべてをわかりやすく解説

感染性胃腸炎の概要

感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が消化管に感染し、嘔吐や下痢などの症状を引き起こす疾患群です。特に冬季にはノロウイルスが原因となるケースが多く、春にはロタウイルス、夏には細菌性の腸炎ビブリオや食中毒が増加します。これらの病原体は、特に高齢者や免疫力の弱い人々に深刻な影響を及ぼすことがあり、感染予防と対策が重要です。

感染性胃腸炎の主な原因

感染性胃腸炎の原因は多岐にわたり、以下のような病原体によって引き起こされます。

ノロウイルス

ノロウイルスは、特に冬季に流行しやすく、感染力が非常に強いウイルスです。有症期間は平均24-48時間であり、感染した人の便や嘔吐物に大量に含まれており、ほんのわずかな量でも感染を引き起こします。飲食物や手指、表面などを介して経口感染します。

ロタウイルス

ロタウイルスは、主に冬から春にかけて流行し、有症期間は平均5-6日とノロウイルスより長いです。特に乳幼児で激しい下痢や嘔吐を引き起こす感染症です。ワクチン接種が進んでいるため、感染者は減少傾向にありますが、乳幼児は重症化しやすいことから、引き続き注意が必要です。

細菌および寄生虫

細菌(例:サルモネラ菌、腸炎ビブリオ)や寄生虫(例:ジアルジア)は、主に汚染された食品や水を介して感染し、食中毒を引き起こします。これらの食中毒は、特に気温が高くなる夏季に発生しやすいことが知られています。

感染経路の主なパターン

感染性胃腸炎は、以下のような感染経路を通じて広がります。

接触感染

接触感染とは、感染者や感染した物体(ドアノブ、手すりなど)に直接または間接的に触れることで、病原体(ウイルスや細菌)が体内に侵入し、感染する経路です。

  • 直接接触:感染者本人や感染者の体液に直接触れることで感染します。
  • 間接接触:感染者が触れた物体(ドアノブ、手すりなど)を介して、病原体が別の人の手に移り、その手で口や目、鼻などに触れることで感染します。

経口感染

汚染された食品や水を摂取することによる感染です。特に、生の二枚貝や十分に加熱されていない食品が感染源となることが多いです。

典型的な症状

感染性胃腸炎の症状は、主に以下のようなものがあります。

吐き気と嘔吐

感染初期に現れることが多く、特にノロウイルスでは嘔吐が顕著です。嘔吐の頻度が高いため、脱水症状に注意が必要です。また、十分な栄養が取れず、栄養不足を起こす可能性があります。

下痢と腹痛

感染後1~2日で下痢が始まります。ロタウイルスでは、下痢の症状が特に強く、幼児では頻繁な下痢が続きます。

発熱

軽度から中等度の発熱が見られることがあり、特に小児では高熱が続く場合もあります。

治療法と対症療法

感染性胃腸炎の治療は、基本的に対症療法が中心となります。

水分補給と栄養管理

脱水を防ぐために、こまめな水分補給が大切です。経口補水液だけでなく、水やお茶など、電解質バランスが整った飲み物を、コップ1杯(約200ml)を1時間ごとに目安に、少量ずつ頻繁に摂取しましょう。

症状が落ち着いてきたら、消化の良い食事を少しずつ摂ることが望ましいです。消化の良い食品としては、おかゆ、うどん、スープなどがあります。一方、繊維質の多い食品や油っこい食品、刺激物などは、消化不良を起こす可能性があるため、控えるようにしましょう。

下痢止めの使用に関する注意点

下痢止めには、腸の動きを止めるタイプや、腸内細菌のバランスを整えるタイプなど、様々な種類があります。下痢止めをむやみに使用すると、病原体が体内に長く留まることで、下痢が長引いたり、症状が悪化したりする可能性があります。また、合併症を引き起こす場合もあります。

特に、下痢が2日以上続く、高熱が伴う、血便が出るなどの症状がある場合は、自己判断で下痢止めを服用せず、必ず医師に相談しましょう。

検査と診断方法

感染性胃腸炎の診断は、症状と周囲の感染状況から行われますが、必要に応じて以下の検査が行われます。

抗原検査

ノロウイルスやロタウイルス感染が疑われる場合、迅速診断キットを用いた抗原検査が行われることがあります。この検査は、便サンプルに含まれるウイルスの一部である抗原という物質を検出し、感染の有無を調べるものです。短時間で結果が得られるため、迅速な診断に役立ちます。

しかし、迅速診断キットには、偽陽性や偽陰性の可能性があること、すべてのウイルス型を検出できないことなどのデメリットも存在します。そのため、診断の確定には、医師が患者さんの症状や他の検査結果などを総合的に判断する必要があります。

なお、この検査は、3歳未満のお子様や65歳以上の方など、一部の対象者において健康保険が適用されます。(2024年9月28日時点)

感染症法との関係

感染性胃腸炎は、感染症法に基づいて5類感染症に分類されており、医療機関は、感染症の発生状況を把握し、まん延防止のための対策を講じることを目的として、一定数以上の感染者を確認した場合や、集団発生が疑われる場合は、保健所に報告する義務があります。保健所は、報告された情報を基に、感染源の特定や流行の状況を把握し、必要な対策を講じます。これにより、感染の拡大を防ぎ、公衆衛生の維持に貢献しています。

感染性胃腸炎の感染対策

感染性胃腸炎の感染拡大を防ぐためには、以下のような対策が必要です。

接触感染予防策の実践方法

接触感染は、ウイルスや細菌が汚染された物品を介して手などに触れ、その後、目、鼻、口などの粘膜を触ることで起こります。そのため、接触感染を防ぐことは、感染症の拡大を防ぐ上で非常に重要です。

職員や介護者は、以下の点に注意することで、接触感染を予防することができます。

  • 手洗い: 石鹸と流水で、手のひら、指の間、爪の間、手首までしっかりと洗い、30秒以上かけて丁寧に洗いましょう。特に、患者様との接触前、後、トイレの後などは必ず手洗いを行いましょう。

※手指衛生に関してはこちらぜひこちらの記事を御覧ください。

  • 手袋の着用: 介護ケアを行う際は使い捨て手袋を着用しましょう。
  • ガウン・マスクの着用: 汚染物や感染者の体液に触れる可能性がある場合は、必ずガウンとマスクを着用しましょう。ガウンを脱衣する際に衣服や周囲の物品に触れないように注意しましょう。
  • 環境整備: 定期的に施設内の清掃を行い、特に頻繁に触れる場所(ドアノブ、手すりなど)は、消毒液を用いてこまめに消毒しましょう。消毒液は次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸水で消毒や洗浄を行いましょう。
  • 感染予防対策に関する教育: 全職員を対象に、定期的に感染予防対策に関する教育を実施し、意識を高めましょう。

サポートハウスみさとヴィラでは半年に1回感染症に関する勉強会を実施し感染を広めないように取り組んでいます。

嘔吐物処理の適切な方法

嘔吐物の処理は、感染拡大を防ぐために特に重要です。次亜塩素酸ナトリウムを用いて迅速に消毒し、処理後は手洗いや換気を徹底します。

嘔吐物処理のステップ

1. 嘔吐物の処理を行う際は、必ず窓を開け十分な換気を行うようにします。

2.手袋とマスク、ガウンを着用し、嘔吐物に直接触れないようにする。

3. ペーパータオルや使い捨て布で嘔吐物を除去し、廃棄する。

4. 次亜塩素酸ナトリウム(0.5%)を用いて消毒し、消毒した場所を再度拭き取る。

サポートハウスみさとヴィラではすぐに処理できるよう専用のキットを準備し対応しています。

次亜塩素酸ナトリウムの使用

消毒には、0.5%の次亜塩素酸ナトリウムを使用します。消毒効果が高く、ウイルスや細菌を効果的に除去することができます。

処理用キットの準備

ここでは先程ご紹介した施設での専用キットをご紹介します。処理を素早く行うために、嘔吐物処理用のキットを準備しておくことが重要と考えます。

処理用キットの内容

  • 使い捨て手袋
  • ビニールエプロン(ガウン)
  • マスク
  • ビニール袋
  • 次亜塩素酸ナトリウム
  • ペーパータオル
  • キャップ
  • 靴カバー

各フロアの設置場所

サポートハウスみさとヴィラの処理用キットは、各フロアに設置しておき、迅速に対応できるようにしています。特に、嘔吐物処理が予想される場所には、常に準備を整えておくことが重要と考えています。

施設における感染性胃腸炎の対応策

施設においては、感染症の流行を予防し、迅速に対応するための体制づくりが必要です。

感染症の流行予防と監視体制

サポートハウスみさとヴィラでは感染症の発生を未然に防ぐために、毎月感染対策委員会を開催し、感染対策を講じています。感染症の兆候が見られた場合は、速やかに対応し、拡大を防ぐための措置を講じています。

感染対策委員会の設置

当施設内に各部門から職員を集め感染対策委員会を設置し、感染症に関する情報を収集し、職員間で共有しています。また、感染予防策の徹底を図り、施設全体で感染管理を行っています。

職員の健康管理と教育

職員は、日頃から自身の健康管理を行い、感染症に関する知識を深めることが求められます。特に、当施設では、職員一人ひとりの衛生管理が、施設全体の感染予防に直結すると考えています。

感染発生時の初動対応

感染が発生した場合は、速やかに感染者を隔離し、施設内の消毒を行います。また、感染拡大を防ぐために、他の利用者様や職員への感染予防策を徹底します。

利用者様の隔離と施設内消毒

感染者は、他の利用者様と接触しないように隔離し、使用した部屋や物品は徹底的に消毒します。施設内の共用スペースも定期的に消毒し、感染拡大を防ぎます。

利用者様のケアにおける標準予防策

感染者のケアを行う際は、手袋やガウン、マスクを着用し、ケア後は手洗いや手指消毒を行います。感染者と接触した職員は、他の利用者様へのケアを避け、感染の拡大を防ぎます。

標準予防策(スタンダード・プリコーション)の実践

スタンダード・プリコーションは、すべての利用者様を対象に、感染症の予防と拡散防止を目的とした感染予防策です。職員と利用者様の双方を感染から守り、施設内感染を防ぐことを目的としています。

スタンダード・プリコーションでは、すべての血液、体液、分泌物、排泄物などの取り扱いを対象としたものですが、当施設では特に嘔吐物、排泄物の処理の際に注意が必要です。

手洗いと手袋の適切な使用

手洗いは、感染予防の基本です。手袋は、血液や体液、分泌物に触れる可能性がある場合に使用し、使用後は必ず手洗いを行います。

マスク、ゴーグル、ガウンの使用方法

感染予防のために、マスクやゴーグル、ガウンを適切に使用します。特に、飛沫感染が懸念される場合は、これらを着用することが求められます。

環境表面の消毒とリネンの管理

施設内の環境表面やリネンは、定期的に消毒し、感染のリスクを最小限に抑えます。リネン類は、感染者のものと区別して取り扱い、他の利用者と共有しないようにします。

終わりに

感染性胃腸炎は、特に高齢者施設において深刻な影響を及ぼすことがあります。感染予防策を徹底し、職員一人ひとりが感染防止に努めることが重要です。日常の衛生管理を徹底し、感染のリスクを最小限に抑える努力を続けることが求められます。

よくある質問 (FAQ)

感染性胃腸炎はどのようにして広がるのですか?

感染性胃腸炎は、接触感染や経口感染を通じて広がります。特に、感染者の便や嘔吐物に触れた手で口に触れることや、汚染された食品や水を摂取することが主な感染経路です。

感染性胃腸炎の予防方法は?

手洗いや手指消毒を徹底し、食品を取り扱う際には十分な加熱処理を行います。感染者との接触を避け、施設内の共用スペースや物品の消毒を行うことも重要です。

感染性胃腸炎になった場合の対処方法は?

症状が現れたら、早めに医療機関を受診し、適切な対症療法を受けます。水分補給をしっかり行い、安静を保ちます。症状が改善するまで、他の人と接触しないようにします。

高齢者施設での感染対策のポイントは?

職員の健康管理と教育を徹底し、感染症の発生を予防します。感染者が出た場合は、迅速に隔離し、施設内の消毒を徹底します。スタンダード・プリコーションを実践し、全ての利用者を対象に感染予防策を講じます。

施設職員としての感染防止対策の実践方法は?

手洗いや手指消毒、適切な個人防護具の着用を徹底します。感染症に関する知識を深め、日常業務においても感染予防を意識して行動します。感染対策委員会の指示に従い、施設内の感染管理を徹底します。

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