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第59回日本神経学会学術大会に参加して~看護師の視点~

2018.06.08

先日、5月23日~26日に北海道(札幌)で開催された神経学会学術大会に参加してきました。

北海道は、桜がやっと散ったとの事で、朝と夜はまだまだ冷える気候でしたが、学術大会の熱気には目を見張るものがありました。今回学術大会に参加し、数多くの新たな試み・治療についての情報を知る事が出来ました。その中で、ALS(筋萎縮側索硬化症)の新薬についての情報があったので、ご報告したいと思います。

まずALSは、運動神経細胞の変性により数年で筋萎縮や筋力の低下が進行し、呼吸筋麻痺にいたりいずれは死に至る未だ原因や治療法が分かっていない神経難病と呼ばれている疾患です。数年前にSNSで話題になったALSの認知度向上のためのキャンペーン「アイスバケツチャレンジ」という活動を、覚えていらっしゃる方も多いと思われます。

ALSの患者様が使用できる薬は、現在はリルゾールやエダラボンと言った薬が承認されていますが、症状改善効果は明らかとは言えないのが現状だとされています。その為、新たな治療法の研究がとても望まれています。

現在新薬として開発している薬に末梢神経障害の治療に用いられるビタミン製剤の『メコバラミン』、肝臓の細胞の再生を目的とした『肝細胞増殖因子(HGF)』を用いた治療法の研究が進められています。

まず、肝細胞増殖因子とは、
臓器の形成や組織の修復に関与する生理活性物質であり。肝細胞の増殖を促進するサイトカイン(免疫細胞のあいだで情報伝達を担うたんぱく質)として発見されたが、肝臓だけでなく心臓・血管・肺・腎臓・消化器・脳神経系・筋肉などさまざまな臓器や組織に作用し、その再生や保護に重要な働きをしています。

この治療法は、2011年頃から研究開発が進められており、投与方法としては、脊髄腔内投与という方法で、腰部脊髄腔内投与カテーテルと言うものを留置し,皮下ポートを埋め込み投与する方法(※1)です。

肝細胞増殖因子は第Ⅱ相試験(※2)の途中で、目標数の約1/3は本登録され、安全上の問題も生じていないそうです。今後、第Ⅱ相試験を完遂し、第Ⅲ相試験(※3)へ移行し、早期薬事承認させてほしいと思います。

※1 腰の辺りより、脊髄腔内にカテーテルを入れて皮下にポートを留置し、専用の器具で接続し投与する。

※2 決められた条件下の治験患者様に対し、第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲で薬剤を使用し、安全性・効果・投与量を調べる試験。

※3 通常、新薬の開発から認可に至るまでは、10年を越える年月がかかると言われていますが、ALSの治療は、元々ある薬を用いている為、新薬開発のプロセスとは異なる場合があります。

こういった研究開発は、私たちが日常行っているケアに直接影響がある訳ではありません。しかしながら、ALSの患者様の希望となるだけでなく、関わっている私たちにとっての希望でもあります。ALSだけでなく、多くの難病患者様にとって、明るいニュースになればと思います。

私たちも患者様との日々の関わりだけでなく、患者様にとって有益となる研究・開発について情報を入手し、皆さまに提供していきたいと思っています。

平成30年6月7日

MC訪問看護ステーション

伊澤誠