2018年6月8日

学会に参加して~相談員の視点~

平成30年5月23日~26日までの期間で北海道札幌「第59回日本神経学会学術大会~神経疾患の克服を目指して~」に参加して参りました。当施設からは看護師とリハビリ職と相談員の3名にて参加致しました。それぞれの視点から、感想を含めた報告をしてみようと思います。

相談員

そもそも今回の学術集会は「神経難病の今」や「神経難病のこれから」をテーマにした主に医師の研究発表の場である為ほとんどが専門分野の研究発表でしたが、その中で学術以外の難病に関わる発表がありました。その中でいくつか興味深い発表をご紹介致します。

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  1. 「ALS患者はどのように人工呼吸器装着を決めるか?

東京医科歯科大学を中心としたグループの発表

要旨:気管切開を伴う人工呼吸器装着に関する意思決定には症状の進行と呼吸器装着後の生活を吟味し納得を伴う過程が必要であった。

背景:患者が装着に対して意思決定に至るまでどのように考えているのかについては知られていない。

考察と結論:ALS患者の装着に対する意向は多様であり変化する。また症状が進行する経験と、装着後の生活を吟味する過程が必要。

意思決定の支援として継続的かつ定期的な病状の評価と患者教育が必要。

2.「気管切開後のALS患者及びその家族支援」

三次神経内科クリニック花の里を中心としたグループの発表

背景:ALS患者の気管切開、人工呼吸器装着に関する意思決定の難しさを知り、身体的・精神的苦痛をいかに緩和するかが大きな課題。支援の在り方を検討した。

方法:入院中の患者、家族の気管切開前後の訴えを聞き取り対応した。

結論:ALSに対する気管切開後も身体的・精神的苦痛がみられる。時間をかけた傾聴QOL向上の為の支援が不可欠である。

3.「ALS患者のエダラボン治療の地域連携の構築」

新潟県立新発田病院の発表

要旨:ALS治療薬エダラボン(ラジカット)の治療に4週間毎に10日間通院が必要な為、通院手段やサポート環境によっては治療中止をせざる得ない場合もあった。

在宅、または医療機関で治療の継続が出来るように病院と地域の医療機関との連携構築をした。

結果と連携の実際:近隣の訪問看護ステーション8か所全てが治療継続を許諾した。しかしながら1か所では対応困難な為2か所の訪問看護ステーションで対応した。

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一例をご紹介させていただきましたが、今回学術集会で、意思決定支援や本人家族に対するサポート、多職種連携の構築の必要性など医学だけでない検討発表が印象的でした。

神経難病において病気の克服を目指す先進的な医療の進歩は必要不可欠ではありますが、その進歩を待っている間も難病の方々は療養生活を送られております。その療養生活を送るにも多くの困難があります。一つ例に上げれば医療費、介護費その他療養生活に係る支出。家庭の経済にも影響を与える事になります。医療と介護・生活の両方を考えていかなければなりません。

また、各専門職の方々がそれぞれの分野にて研究や努力を日々重ねている事と思います。しかし分野のまたがった内容においては密な連携が取れていないのが現状です。発表にもあったように人工呼吸器を装着するかどうかの意思決定において、患者本人の意思を優先するのは勿論ですが、その意思決定をするにも情報が少ないように思えるのです。

  1. 呼吸器を装着するとどんな身体的な変化が起こるのか等医療面からの情報
  2. 装着する事で自身の生活はどのように変化するのか等生活面での情報
  3. 装着する事で月々の支払いはどのくらいになるのか等経済的な情報

などそれぞれの情報を基に公平な選択をすべきであると思います。

現在多くの患者は医療面での情報が主であり、しかも熟考する時間は決して長くありません。生死を選択する事にも繋がる決断を、限られた情報の中で選択しなければならないのは決して公平な選択ではない様に思います。

今後我々も神経難病を抱える方々、またはそれに関わる方々にとって多くの情報を提供でき、公平な選択ができるような支援を目指していければと思いなおす学会となりました。

相談員 嶋

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