2024年5月20日

人工呼吸器が必要なときとは?

はじめに 

先日、ヴィラにて人工呼吸器の勉強会を開催しました。当施設では人工呼吸器を使用されている利用者様が多いため、携わる職員にとってとても勉強になりました。この勉強会に触発され、人工呼吸器の記事を書きましたのでぜひご覧ください。

人工呼吸器とは何でしょうか?人工呼吸器は、生命維持を助ける医療機器の一つです。特定の医療状況下で、利用者様の呼吸を補助または代行するために使用されます。この装置の主な役割は、十分な酸素が体内に取り込まれ、二酸化炭素が効率的に排出されることを保証することです。つまり、人工呼吸器は肺に出入りする空気の流れを補助する機会となります。特に、ALS等では、急性呼吸不全やCOPD等とは異なり、肺疾患の治療というよりは「(自力で呼吸ができなくなった時の)換気の補助」「呼吸筋の仕事量軽減」などが主な役割になっています。

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※人工呼吸器について一般的な理解を深めることを目的としており、具体的な医療行為の指針を提供するものではありません。

人工呼吸器の使用状況

人工呼吸器が使われる主な場面としては、自ら効率的に呼吸することをできなくなった場合です。これには、重大な肺疾患、重度の感染症、大きな手術後の回復期、または神経障害が含まれます。これらの状態下では、生命を維持するためには人工呼吸器が絶対的に必要となります。

人工呼吸療法の効果と目的

人工呼吸器(人工呼吸療法)には大きく以下の3つの目的があります。

  1. 肺への空気の出し入れを補助することで、肺胞内のガス交換を維持すること
  2. 酸素と二酸化炭素のガス交換を助け、血液中の酸素と二酸化炭素のバランスを適切に保つこと
  3. 自力での呼吸が困難な場合に、呼吸筋や呼吸補助筋にかかる負担を軽減すること

これらを通じて、急性呼吸不全や呼吸困難から回復するまで呼吸を助ける役割を果たします。

人工呼吸器は肺炎など呼吸器系の疾患や手術時の麻酔管理といった急性期の場面でしばしば活用されます。またCOPDなどの慢性呼吸不全でも、日常生活の質の維持に役立っています。

つまり、生命維持とともにQOLの向上という点でも効果のある医療機器と言えます。

主要な使用理由と症状

 人工呼吸器の使用は、多くの場合、緊急の医療状況で命を救うために不可欠です。ここでは、人工呼吸器が必要とされる主な理由とそれに伴う症状について詳しく説明します。

血中酸素濃度の低下とその影響

 人間の体は、細胞レベルでの機能を維持するために酸素を必要としています。血中の酸素濃度が低下すると、臓器への酸素供給が不足し、身体機能の維持が困難となります。例えば、酸素不足により、脳や心臓などの重要な臓器が正常に機能しなくなる可能性があります。これが人工呼吸器が必要とされる典型的な理由の一つです。

 血中酸素濃度が低下してしまうと、息切れや皮膚の変色、錯乱や眠気などの症状が見られることがあります。皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定できるパルスオキシメーターなどを使用して、状態を確認することができます。測定値のもつ意味はその人の状態や疾患によっても異なるため、測定値の判断は主治医の指導を仰いでください。

意識レベルの低下とその原因

 意識レベルの低下もまた、人工呼吸器の使用を要する重要なサインの一つです。これは脳への酸素供給が不十分であることが一因となって発生することがあるからです。脳が正常に働かなくなることで自発的に呼吸を行う能力を失うことがあります。この場合、呼吸の補助が緊急で必要となります。

糖尿病や脱水状態による代謝変化

 糖尿病や脱水状態など、体の代謝に関わる疾患も、呼吸機能に影響を与えることがあります。これらの状態では、体内の酸塩基バランスが崩れ、呼吸困難を引き起こすことがあります。糖尿病の利用者様では、特に血糖管理が不十分な場合に呼吸のリズムが乱れ、クスマウル大呼吸によって代償を行い、改善されない場合は人工呼吸器を使用する必要が出てくることがあります。

脳出血や脳内圧の上昇が呼吸に与える影響

 脳出血やその他の神経系の問題は、呼吸中枢の機能障害を引き起こすことがあります。脳内圧が上昇すると、脳幹にある橋が圧迫され、自然な呼吸リズムが妨げられることがあります。このような状況下では、呼吸を補助し、適切なガス交換を保持するために人工呼吸器が使用されることがあります。

人工呼吸器が求められる特殊な状況

 人工呼吸器は、通常の医療状況を超えた特別なケースで使用されることが多いです。これには、慢性疾患が悪化した場合や、予期しない急激な健康の変化が含まれます。

病気や状態による例外的なケース

 COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪などでは、標準的な治療だけでは足りない場合があります。肺の機能が徐々に低下し、日常的な活動だけでなく、呼吸さえも困難になることがあります。さらに炎症や感染により呼吸状態が悪化すると人工呼吸器に頼ることになります。

また重度のアレルギー反応やアナフィラキシーは、突然の気道の腫れや呼吸困難を引き起こすことがあります。これらは速やかな対応を必要とし、状態によっては人工呼吸器が生命を救う手段の一つとなります。

外傷後の脳圧上昇

 交通事故や転倒などによる頭部の重傷は、脳内圧の急激な上昇を引き起こすことがあります。脳圧が高くなると、脳への血流が制限され、致命的な結果を招くことがあります。このような状況では、医療チームは脳圧を管理しながら、呼吸を補助するために人工呼吸器を使用することがあります。

生命維持における人工呼吸器の役割

 重篤な肺疾患、重度のアレルギー反応、大きな手術後の回復、あるいは事故による重傷、神経難病の方など、人工呼吸器が必要とされる状況は多岐にわたります。これらの状況下では、自然な呼吸が困難または不可能になるため、生命維持のために人工呼吸器による呼吸補助が必要となる場合があります。

予防と早期対応の重要性

 人工呼吸器の使用は、多くの場合、緊急時に選択される手段の一つです。そのため、疾患によっては予防措置を講じることが重要となります。たとえば、病気の早期発見と管理、適切な医療機関へのアクセス、そして日常的な健康状態の維持が人工呼吸器への依存を防ぐ鍵となります。

 具体的には、COPDや重度のアレルギーがある場合、定期的な医療チェックを受け、必要に応じて早期から適切な治療を開始することが推奨されます。また、転倒などの事故を防ぐための安全対策を実施することも、外傷による人工呼吸器の使用を減少させる効果があります。

まとめ

 人工呼吸器は、生命維持を助ける医療機器の一つであり、呼吸を補助するために使用されます。人工呼吸器の適切な使用は、病状が悪化した場合や重大な事故による怪我から回復する過程だけではなく、重度の神経難病の方の生命を維持するために重要な役割を果たします。

 人工呼吸器の適切な使用は、呼吸が困難または不可能になった利用者様に対して、必要な酸素を供給し続けることを可能にします。そのため、勉強を行いしっかりとした知識を持っておくことが必要となります。

※この記事では人工呼吸器について一般的な理解を深めることを目的としており、具体的な医療行為の指針を提供するものではありません。

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