2025年2月12日

胃ろうという選択肢-食べる喜びと安心への架け橋-

「食べることは生きること」。しかし、ALSや脳卒中、その他の疾患などで口からの摂食が難しくなると、栄養補給の方法にも悩みが生じます。そんな中、胃ろうは、栄養を摂取するためのひとつの手段となります。

本記事は、胃ろうを検討されている方、すでにご利用中の方、そのご家族、そして医療・介護現場でご活躍される皆様に向けとなります。胃ろうの基本知識からケア方法、当社での実際のエピソードをお届けします。

1. 胃ろうとは?その基本と必要性

胃ろうは、経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy : PEG)などの方法を用いて、経皮的に胃にカテーテルを挿入し、直接胃に栄養剤を届けるための医療処置です。

口からの摂取が困難な場合、胃ろうは誤嚥性肺炎のリスクを低減し、安定した栄養補給を可能にします。

胃ろうが選ばれる理由

  • 誤嚥性肺炎の予防: 口から食事を摂るときに比べ、誤嚥のリスクが大幅に低減されます。
  • 安定した栄養補給: 必要な栄養素を計画的に補給できるため、体力維持や免疫力の向上が期待されます。
  • 本人・ご家族の負担軽減: 食事介助の負担が減り、安心して日々の生活を送るサポートとなります。

2. 胃ろうのメリットとデメリット

メリット

  • 栄養補給: 誤嚥のリスクが低く、安定した栄養摂取が可能です。
  • 薬剤の投与が容易: 簡易懸濁法などにより、必要なお薬をスムーズに投与できます。
  • 生活の質向上: ご本人の安心感や「その人らしい生き方」を支える大切な選択肢となります。

デメリット

  • 口腔ケアの必要性: 口からの摂食が少なくなるまたはなくなるため、唾液分泌の減少や口内環境の変化に対応するケアが必要です。
  • 皮膚トラブルのリスク: 胃ろうの周囲に皮膚トラブル(発赤、ただれなど)が生じる可能性があり、日々の観察とケアが求められます。
  • 感染リスク: 瘻孔部位の感染や炎症に対する注意が必要です。
  • 心理的な負担: 新しい医療器具に対する抵抗感や不安が生じることもあります。
  • カテーテルの交換:胃内ストッパーの種類により交換頻度は異なりますが、定期的に交換する必要があります。

3. 胃ろうの日々のケアと管理

3-1. 胃ろう周囲の皮膚ケア

  • 清潔: 毎日洗浄し、清潔な状態を保ちます。
  • 乾燥: 洗浄後は、自然乾燥させるか、清潔なガーゼで優しく水分を拭き取ります。
  • 保湿: ワセリンなどの保湿剤を用いて皮膚の乾燥を防ぎます。
  • 観察: 毎日、赤みや腫れ、分泌物などの異常がないか確認し、異常があれば早めに医療機関へご相談ください。

3-2. 栄養剤・お薬の投与方法

  • 栄養剤の選択: 医師や管理栄養士の指導に従い、最適な栄養剤を選びます。
  • 注入方法の確認: 栄養剤の注入速度、量、温度など、具体的な方法をしっかり確認しておきましょう。
  • チューブの洗浄: 栄養剤注入後は、白湯などでチューブ内を十分に洗浄し、詰まりを防ぎます。
  • 簡易懸濁法: 錠剤やカプセルを約55℃のお湯に溶かして投与する方法を利用する場合は、必ず医師や薬剤師に確認してください。

※簡易懸濁法はこちらの記事を御覧ください

4. 心に寄り添うエピソード:胃ろうと共に歩む日々

エピソード1:晩酌

ALSと診断されたAさんは、胃ろうを造設してもかつての晩酌の楽しみを手放すことはありませんでした。ある晩、栄養剤注入器からはまるでビールのような泡が見え、Aさんは「胃ろうからでも晩酌ができるんだ!」と笑顔でおっしゃいました。医療スタッフもその温かな笑顔に、胃ろうがもたらす新たな生活の可能性を実感しました。

エピソード2:お買い物

進行性の神経難病を抱えるAさんは、以前大好きだったお酒を自ら選びたいという思いがありました。介護スタッフと一緒にコンビニへ出かけ、お気に入りの日本酒やデザートを手にしながら、Aさんは「胃ろうがあっても、生活の楽しみは変わらない」と語りました。その姿は、ご家族やスタッフにとっても大きな励みとなりました。

これらのエピソードは、胃ろうが単なる医療処置でなく、ご本人の生きる喜びや生活の質を守る大切なサポートであることを示しています。

5. 医療・介護のプロによるサポート体制

株式会社MCでは、胃ろうを検討・利用される方々に向け、医師、看護師、管理栄養士、介護福祉士、その他の専門職が連携した多職種チームケアを実践しています。
それぞれの専門知識を活かし、患者さん一人ひとりの状態に合わせたきめ細やかなサポートを提供することで、「その人らしい生き方」を尊重したケアを実現しています。

6. まとめと今後のサポート

胃ろうは、ただの医療処置ではなく、食べる喜びや生活の質を守るための大切な選択肢です。口からの摂食が難しくなった場合でも、胃ろうを通して安全な栄養補給を行いながら、ご本人の「その人らしい生き方」をしっかり支えることができます。
株式会社MCは、多職種チームによる温かいサポート体制のもと、皆さまが安心して日々の生活を送れるよう、全力で支援いたします。

お問い合わせ・ご相談

入居に関するご質問やご相談、また施設については、下記よりお気軽にお問い合わせください。

(注)本記事は一般情報の提供を目的としており、具体的な治療やケアについては、必ず医師や専門の医療従事者にご相談ください。

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利用者さまの食べたいもの・飲みたいものをできるだけ実現させるため、さまざまな工夫を取り入れています。気管切開を行い人工呼吸器を使っている利用者さまでも、食事やスイーツなどを食べやすい形状にしてお口で味わうことや、胃ろうを通してアルコールを摂取することが可能です。「胃ろうからお酒?」と驚かれるかもしれませんが、MCではできる限り利用者さまのご希望に沿えるよう、体調と相談しながら柔軟な対応を行っています。

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アクリル板などの透明な板に「はい」「いいえ」や「50音」等が書かれており、介助者が文字盤を指さししたり、見つめている文字が利用者さまと介助者の瞳を結ぶ視線の中心に来るように文字盤を動かして使用します。目線が動かせる方なら外出先など場所を問わず手軽に使用できるため、欠かせない意思伝達アイテムです。

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