2024年6月28日

デスカンファレンス:医療の質向上と心のケアを実現する場

はじめに

 医療従事者として、利用者様と真摯に向き合い、最善の医療や看護、リハビリなどのケアを提供することは、私たちの責務であり、同時に喜びでもあります。しかし、どんなに努力していても、利用者様が亡くなってしまうことは避けられません。そのような時、デスカンファレンスは、医療者にとってかけがえのない経験となります。

今回は、Global forum on Nursing and Palliative Care(看護と緩和ケアに関する世界フォーラム)が6月27日にイギリスにて開催されることに関連して、デスカンファレンスについて記事にしました。緩和ケアについて考える良い機会になっていただけると幸いです。

デスカンファレンスとは

デスカンファレンスとは、利用者様が亡くなった後に行われる、医療・介護スタッフ間で行う会議です。医師、看護師、介護士、ソーシャルワーカーなど、利用者様のケアに関わった全てのスタッフが参加します。

デスカンファレンスの目的

デスカンファレンスの目的は、大きく3つあります。

  • 利用者様の生き方・死を尊重し、悼む場とする
  • スタッフ自身の心のケア
  • 今後のケアの質向上につなげる

1. 利用者様の生き方・死を尊重し、悼む場とする

 デスカンファレンスの最も基本的な目的は、利用者様の生き方や死を尊重し、その人生に敬意を払うことです。利用者様の最期を振り返り、その人生の歩みを尊重することで、医療従事者としての使命感と感謝の気持ちを持つことができます。これは単なる形式的な儀礼ではなく、利用者様との出会いと別れを通じて、医療従事者としてのあり方を見つめ直し、自分自身の成長につなげる貴重な機会です。

2. スタッフ自身の心のケア

 終末期ケアに関わるスタッフは、利用者や利用者の死に直面することが多く、深い喪失感や悲しみを抱えることがあります。デスカンファレンスは、スタッフ同士がこれらの感情を共有し、支え合うことで、心の負担を軽減し、心のケアを行う場として機能します。スタッフ全員が互いの思いを分かち合い、支え合うことで、心の整理がつき、前に進む力となります。

3. 今後のケアの質向上につなげる

 デスカンファレンスでは、ケアの流れや結果を振り返り、うまくいった点や改善点を共有します。それぞれのスタッフが異なる視点から意見を述べ合うことで、より客観的な評価が可能となり、今後のケアの質向上に役立てることができます。このプロセスを通じて、スタッフ全員が自身のスキルを向上させ、より良いケアを提供するための具体的な知識を得ることができます。

デスカンファレンスを通じて自分自身をケアする

 終末期ケアでは、「もっとこうしていれば」という後悔の念が付きまといます。デスカンファレンスは、こうした後悔や悩みを共有し、自分の中で整理するための重要な機会です。医療の現場では、すべての利用者を救えるわけではないという現実に直面することが多々ありますが、デスカンファレンスでこれらの感情を共有することで、心の整理が進み、自分が行ったケアに対する納得感を得ることができます。

  • 過去には戻れないが、共有を通じて自信を持つ
  • 言えないことを話すことで心の整理
  • みんなで共有し、次のステップへ進む

デスカンファレンス開催時の注意点

デスカンファレンスを効果的に実施するためには、いくつかの注意点があります。

  • 心理的安全を確保するルール作り
  • 司会者の重要性
  • 全員が意見を出せる場作り
  • 責任追及の場ではないことの共通認識
  • 批判ではなく肯定+意見での議論
  • 看護師のグリーフケアの実施
  • 医療者自身の心のケア
  • 時間制約の補完
  • 忙しい中での効率的な共有
  • 7日以内のデスカンファレンス開催

心理的安全を確保するルール作り

デスカンファレンスでは、参加者が自由に意見を出し合える環境が必要です。そのためには、心理的安全を確保するためのルール作りが不可欠です。参加者が安心して自分の意見や感情を表現できるよう、デスカンファレンスの前にルールを設定しましょう。

司会者の重要性

デスカンファレンスの進行役である司会者の役割は非常に重要です。司会者は、会議の進行を円滑にし、全員が意見を述べる機会を均等に持てるように配慮する必要があります。適切なタイミングで話を振り、議論が偏らないようにすることが求められます。

全員が意見を出せる場作り

デスカンファレンスでは、すべての参加者が意見を出すことが大切です。一人一人の意見が集まることで、多角的な視点からケアの振り返りができ、学びも深まります。発言しやすい雰囲気を作り、全員が積極的に参加できる場を提供しましょう。

責任追及の場ではないことの共通認識

デスカンファレンスは、過去のケアを振り返り、学びを得るための場であり、責任を追及するための場ではありません。全員がこの共通認識を持つことが重要です。批判ではなく建設的なフィードバックを心掛け、相手の立場を尊重することが大切です。

看護師のグリーフケアの実施

デスカンファレンスは、看護師や他の医療従事者にとってのグリーフケアの場でもあります。利用者や利用者の死に直面し、喪失感を抱えるのは家族だけでなく、医療者も同様です。デスカンファレンスを通じて、そうした感情を共有し、心のケアを行うことが重要です。

自分のケアに自信を持って

 デスカンファレンスは、医療従事者にとって非常に重要な学びの場です。しかし、それ以上に、自分自身のケアや心の整理をするための貴重な機会でもあります。過去には戻れないけれど、デスカンファレンスを通じて得た学びや共有した経験は、確実にあなたの自信と成長につながります。

まとめ

 デスカンファレンスは、医療従事者が学び、成長するための大切な場です。効果的に実施するためには、参加者全員が安心して意見を述べられる環境を作り、建設的な議論を行うことが必要です。これらの注意点を踏まえて、次のデスカンファレンスをより有意義なものにしていきましょう。

デスカンファレンスに参加することで

  • 利用者様への理解を深め、より質の高いケアを提供できる
  • スタッフ同士の信頼関係を築き、チーム全体のケアの質を向上させる
  • 医療者として成長し、利用者様と真摯に向き合うことができる

このブログ記事が、デスカンファレンスへの理解を深め、参加するきっかけとなることを願っています。

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持続吸引器/排唾管

口腔内の唾液を24時間持続的に吸引できる専用機器。唾液による肺炎リスクを下げ、夜間の介助負担も大幅に軽減します。常に口腔内に当たる吸引口の先端部分には既成のプラスチックパーツがついていますが、利用者さまによってはその硬さや大きさに違和感がある場合もあります。そこでMCでは、形や素材を手作りで工夫し、一人ひとりの好みに合わせた快適な使用感の実現を目指しています。

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お知らせ

アモレ

気管を切開し人工呼吸器を装着している方の気管内の痰を、気管カニューレから24時間自動で持続的に低圧で吸引する機械。導入することで介助者による気切部からの気管吸引の回数を大幅に減らすことができ、運転音も静かなので、利用者さまの負担軽減や生活の質向上につながっています。

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Eeyes

視線検出式入力装置を接続した、目の動きによる文字入力ができる意思伝達装置。文字だけでなく絵文字も使用できるのが特徴で、伝え難い感情のニュアンスを表現することが可能です。また、体の部位を示す絵文字と操作に関する絵文字を組み合わせるなどの工夫で、通常の文字を入力するよりも素早いコミュニケーションを実現できます。

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プラスチックケーススイッチ

押した時がスイッチオン・離すとオフとなる、指で押して使うタイプの軽量でシンプルなスイッチ。握力の大きさに応じて適切なスイッチを選ぶことができます。プラスチックケースの中に内蔵されたマイクロスイッチの場所を変えることで、感度を細かく調整することが可能なため、利用者さまの状態に合わせて工夫してセッティングを行っています。

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