ALS利用者の「誤嚥性肺炎ゼロ」を目指す!進行度別カフアシスト活用術と実践的喀痰管理のポイント

「何度体位変換しても、吸引を繰り返しても、なんだかスッキリしない…」
「利用者様が苦しそうにしているのを見るのが、本当に辛い…」
ALS(筋萎縮性側索硬化症)をはじめとする神経難病のケアにあたる看護師や介護士、リハビリスタッフの皆様。現場でこんなもどかしさを感じたことはありませんか?
ALS利用者様にとって、呼吸筋力の低下による「痰の絡み(喀痰困難)」は、命に直結する深刻な問題です。中でも「誤嚥性肺炎」は、利用者様のQOL(生活の質)を著しく下げるだけでなく、最大の脅威となり得ます。
しかし、適切なツールとチームの力があれば、このリスクは限りなくゼロに近づけることができます。
以前、当施設でこんなことがありました。
自力で痰を出すことが難しくなり、何度も頻繁に吸引を行わなければならなかった利用者様。ご本人もケアするスタッフも疲弊しきっていました。しかし、カフアシスト(排痰補助装置)を導入し適切な設定を行ったところ、なんと1回の実施で奥の痰までスッキリと引くことができたのです!その時の、パッと明るくなった利用者様の安堵の表情は、今でも私たちの大きなモチベーションになっています。

目次
ALSが進行すると、自力で強い咳をする力(咳嗽力)が弱まり、気道の奥に分泌物(痰)が溜まりやすくなります。これが誤嚥性肺炎の引き金です。
カフアシストは、単に「痰を吸い出す」機械ではありません。
機械的に肺へ空気をしっかり送り込み(吸気:陽圧)、一気に空気を吸い出す(呼気:陰圧)ことで、「人工的に力強い咳」を作り出す装置です。
これにより、通常の吸引チューブでは届かない気道の奥深くに溜まった痰を喉元まで移動させることができ、安全かつ効果的に除去できます。カフアシストは、肺炎になってから使うものではなく、「肺炎を起こさせないための予防的ケアの要」なのです。
ALSの進行度によって、呼吸機能や嚥下機能は変化します。カフアシストを「いつから」「どのように」使うべきか、段階別に見ていきましょう。
まだ自発呼吸が保たれているものの、嚥下機能の低下(食事中のむせ、声の変化、食後の疲労感)が見られ始める時期です。
ピークフロー値が正常の半分以下になったり、肺活量が著しく低下したりすると、自力での喀痰が困難になります。睡眠時無呼吸や朝の頭痛など、夜間の換気不全のサインを見逃してはいけません。
人工呼吸器管理下では、気管チューブによる刺激などで分泌物が増加し、痰のトラブルが常態化しやすくなります。

実際に現場で操作する際の具体的な設定の目安と、絶対に知っておくべき注意点をお伝えします。
※設定の変更は必ず医師の指示のもと行ってください。
カフアシストを使用する上で、私たちが現場で一番神経を使っているのが「気胸」のリスクです。 ALSが進行すると、肺や胸郭の柔軟性が低下します。そこに強い陽圧換気をかけると、肺に過度な負担がかかり、気胸を引き起こす危険性が常につきまといます。 だからこそ、「圧は慎重に、徐々に上げる」「毎回必ず医師に状態を確認し、安全な設定値を共有する」という基本を徹底することが何よりも重要です。
カフアシストの威力を120%引き出すには、他のケアとの「組み合わせ」が絶対に必要です。

肺の各区域からの排痰を促すため、重力を利用します。カフアシストや吸引を実施する前に、側臥位や頭低位などをとり、痰を気管の太い部分へと移動させます。
口の中の細菌が肺に落ちることで肺炎は起こります。1日複数回、特に食後の口腔ケア(歯磨き、舌苔除去、保湿)を徹底します。経管栄養で口から食べていない方でも、口腔ケアは必須です!
誤嚥性肺炎を防ぐには、医師、看護師、介護士、リハビリ職、そしてME(臨床工学技士)の連携が不可欠です。
当施設では、スムーズで確実な情報共有を行うために「Google Workspace」をフル活用しています。
例えば、「カフアシストの設定圧について確認したい」「機器の調子が少しおかしい」といった場合、Google Chatを使ってMEや担当者に即座に連絡。どのスタッフが入っても常に安全で均一なケアを提供できる体制を整えています。
この「壁のない密な連携」こそが、気胸などのリスクを最小限に抑え、1回でスッキリ痰を引けるケアを実現する土台となっています。
ALS利用者様の呼吸ケア・喀痰管理は、決して一人の力では完結しません。チーム全員で観察し、評価し、連携し、そして利用者様やご家族にもケアの目的を理解していただくことが大切です。
株式会社MCの理念である「その人らしい生き方をともに考え、ともに挑戦する」。
苦しい痰の絡みから解放され、誤嚥性肺炎の不安を取り除くことは、利用者様が「好きなものを味わう」「行きたい場所へ出かける」「大切な人と笑顔で過ごす」ための最大の土台作りなのです。
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伝の心
センサーを使用して身体の一部をわずかに動かすだけで、文字をパソコンに入力できる意思伝達装置。 DVDやテレビなどのリモコン操作、インターネットや電子メールなど、介護者の力を借りることなく、利用者さまが多くのことを自由に行うことができます。これまでの仕事を継続する・新しい活動を始めるなど、さまざまな可能性を広げるツールであり、ALS当事者で国会議員の舩後靖彦氏も使用していることで知られています。
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ピエゾニューマティック(PPSスイッチ)
筋肉の「ひずみ」や「ゆがみ」で作動するピエゾセンサーと、指先の僅かな動きで作動するエアバッグ(ニューマティック)センサーの2種類を選択できるスイッチ。いずれも感度調整が可能で、僅かな力でも操作できるため、幅広い方にご使用いただけます。MCでは更にチューブを利用したカムスイッチを作成し、接続して使用しています。
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リフト(スリングシート)
自力で移動できない利用者さまを介助リフトで運ぶ際に使用するシート状の補助具。頭から全身を包み込むハイバック型、頭を支える必要のない人に適したローバック型、介助者が取り扱いやすい脚分離型などのさまざまな種類があります。身体状態や体重等を考慮して、その方に合ったスリングシートを選択します。

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