2025年1月4日
「今日は少し窓辺で過ごしてみませんか?」
「天気もいいので、外の空気を吸ってみましょうか?」
これは、サポートハウスみさとヴィラとノイエで日々交わされている、何気ない会話の一コマです。神経難病と闘われている方、人工呼吸器と共に生活されている方にとって、ベッドを離れて過ごす時間は、かけがえのない希望となります。
離床支援がもたらす、その人らしい生活
高度な医療ケアが必要な方の「離床支援」は、単にベッドから離れる時間を作るだけではありません。それは、その方の「したいこと」「なりたい自分」を支える、大切なケアの一つです。
当施設に入居されているAさん(70代・女性)は、進行性の神経難病であるALSにより、徐々に体を動かすことが難しくなっていました。「しだれ桜が好きだった」という何気ない会話から、私たちは段階的に離床時間を増やしていきました。最初は5分程度の車椅子での移動から始まり、最終的にはお花見の時期に1日30分ほどかけて、しだれ桜を見に行きました。「しだれ桜を見ながらぼーっと過ごす時間が一番の楽しみ」と、Aさんは穏やかな笑顔を見せてくださいました。
専門性の高い看護師による安全な離床支援
医療依存度の高い方の離床支援には、高度な専門知識と細やかな観察力が求められます。当施設では、経験豊富な看護師を中心に、以下のような点に特に注意を払っています:
1. 呼吸状態への細やかな配慮
人工呼吸器をご使用の方や神経難病の方は、呼吸機能が低下していることが少なくありません。離床の前後で、呼吸数、血中酸素飽和度(SpO2)、呼吸音などを丁寧にチェックします。また、人工呼吸器の回路の位置の調整を行います。
2. 快適な姿勢のサポート
理学療法士と連携し、その方の関節の状態に合わせた最適な姿勢をサポートします。必要に応じて特殊なクッションも使用し、少しでも長く快適に過ごしていただけるよう工夫しています。多い方ではクッションなどを約8個使うなど、その方に合わせた調整を行っています。
3. 皮膚トラブルの予防
長時間の臥床により褥瘡(床ずれ)のリスクが高まる方には、体圧分散マットレスを使用し、定期的な体位変換を行います。車椅子に移動する際も、骨突出部への負担をこまめにチェックします。しかし、すでに皮膚トラブルがある方は悪化するおそれがあるため車椅子離床を避ける判断を行います。
4. 心とからだの変化への気配り
長期臥床している方や自律神経障害のある方は、体位変換時に血圧が大きく変動することがあります。ゆっくりと段階的に姿勢を変えながら、常にバイタルサインを確認します。また、表情や小さな動きから、体調の変化を読み取るよう心がけています。
コミュニケーションを大切にした個別ケア
当施設では、意思伝達装置や透明文字盤など、様々なコミュニケーション手段を用意しています。離床時も快適に意思疎通ができるよう、機器の配置や使用方法を工夫しています。
日々の些細な会話や表情から「したいこと」を汲み取り、可能な限り実現できるよう努めています。「お買い物に行きたい」「家族と一緒に家に帰りたい」など、一人ひとりの願いに寄り添ったケアを心がけています。
あたりまえを当たり前に
「俺はこれを完成させるために生きてきた。もう死んでも構わない」
これは、ALSを患われていた一級建築士の方が、ご自身が設計した団地の完成を見届けた時の言葉です。人工呼吸器を使用し、自力での呼吸も困難な状況でしたが、その方の「見たい」という思いに寄り添い、私たちは一緒に完成した団地を見に行きました。
また、多系統萎縮症を患われた方は、「姪っ子の結婚式に参列したい」という強い願いをお持ちでした。医療的ケアが必要な状況でしたが、万全の準備を整え、大切な家族の晴れの日に立ち会うことができました。
建築士として設計した建物の完成を見届けること。大切な家族の結婚式に参列すること。 多くの方にとって、これらは「当たり前」の出来事かもしれません。 しかし、自分の力で呼吸ができない、声が出せない、歩けない状況では、その「当たり前」が難しくなってしまいます。
私たちサポートハウスみさとヴィラとノイエは、 「その人らしく生きる」を支えるため、 一人ひとりの「当たり前」を大切にしています。
医療依存度が高く、在宅での介護に不安を感じていらっしゃる方も、 まずはお気軽にご相談ください。 経験豊富な看護師が、ご本人様やご家族様の思いに寄り添いながら、 これからの生活についてご提案させていただきます。
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